東北地方・新潟の都市雇用圏(2010年基準)|地理・地形・地名についての備忘録
「都市圏」という経済地理学の概念がある。
ある都市を中心にして、経済的・文化的にその都市に依存する郊外を含めて1つの圏域と見なす概念である。
「東京大都市圏」、「三大都市圏(東京・名古屋・大阪)」などは小学校でも習うはずである。
日本で生活する人であれば、この概念はすんなりと理解できると思われる。
「都市圏」の設定基準に使われる指標は様々である。
通勤者の移動範囲や医療サービスの享受範囲、買い物の行動範囲などが主に用いられる。
東京大学名誉教授の金本良嗣氏は、「都市圏」への1つのアプローチとして「都市雇用圏」を提唱した。
複雑な定義があるのだが、要約すると以下の通りである。
―5000人以上の集住を有する市町村を「中心都市」とし、中心都市への通勤率(=中心都市への通勤者/定住就業者数)が10%以上の市町村を「郊外」とする。
通勤者の移動を基に圏域が設けられている為、地域の労働の拠点である中心都市と労働者を抱える郊外との関係を地理学的に分析するために用いられる。
なお、 中心都市の集住人口が5万人以上だと「大都市雇用圏」、5万人未満であれば「小都市雇用圏」として分類している。
詳しくは
金本先生の解説サイトや
Wikipediaを参照してほしい。
今回は私の興味の範囲である東北地方・新潟県に絞って都市雇用圏について考えていきたい。
まずは2010年時点での大都市雇用圏を整理した表を参照してほしい。
(画像のみ表示し、拡大してほしい)
東北地方+新潟には2010年現在で18の都市雇用圏が形成されている。
それらを中心都市名を用いて「○○都市圏」と呼ぶとすれば、県毎に以下のようにまとめられる。
なお、カッコ内は都市雇用圏内人口である。
青森県:青森都市圏(313,097人)、弘前都市圏(305,342人)、八戸都市圏(335,854人)
岩手県:盛岡都市圏(474,395人)
宮城県:仙台都市圏(1,574,942人)、石巻都市圏(213,780人)
秋田県:秋田都市圏(412,968人)
山形県:山形都市圏(544,518人)、鶴岡都市圏(144,354人)、酒田都市圏(149,789人)
福島県:福島都市圏(456,996人)、会津若松都市圏(232,992人)、郡山都市圏(554,194人)、いわき都市圏(347,667人)
新潟県:新潟都市圏(1,073,098人)、長岡都市圏(368,043人)、三条・燕都市圏(222,512人)、上越都市圏(239,356人)
※三条・燕都市圏は三条市・燕市両市を中心都市としている。
都市雇用圏内人口の順番で並べたのが以下である。
①仙台都市圏(1,574,942人)
②新潟都市圏(1,073,098人)
③郡山都市圏(554,194人)
④山形都市圏(544,518人)
⑤盛岡都市圏(474,395人)
⑥福島都市圏(456,996人)
⑦秋田都市圏(412,968人)
⑧長岡都市圏(368,043人)
⑨いわき都市圏(347,667人)
⑩八戸都市圏(335,854人)
⑪青森都市圏(313,097人)
⑫弘前都市圏(305,342人)
⑬上越都市圏(239,356人)
⑭会津若松都市圏(232,992人)
⑮三条・燕都市圏(222,512人)
⑯石巻都市圏(213,780人)
⑰酒田都市圏(149,789人)
⑱鶴岡都市圏(144,354人)
やはり仙台が頭一つ抜けており、その後ろに新潟が、それ以下は郡山を例外として県庁所在地が続いている。
市単位では人口規模が小さい山形市(254,244人)や会津若松市(126,220人)が、都市雇用圏の括りで見れば、意外と圏内人口が多いように思える。
一方、福島県内最大人口のいわき市(342,249人)は都市雇用圏では郡山と福島に及んでいない。
都市雇用圏内人口の順位は我々が漠然と抱く「街の規模」のイメージにかなり近い順番になっていると私は感じている。
後背にある人口が多いほど、「街の規模」が大きくなるのは誰もが理解できると思う。
都市について議論する際に、市町村単位での小さい視点ではなく、都市雇用圏に限らず、都市圏に主眼を置くべきであることは明らかであろう。
しかし、都市圏を以てしてでも正確な都市の実態把握には限界がある。
都市圏の設定にも統計資料の関係から市町村単位の人口等の数値を用いる他ないのである。
都市研究の発展には、より確実な都市圏設定が必要になるだろう。
今後の研究成果に期待したい。
各都市圏についての詳細は今後の記事で扱う事にする。