奄美大島の果物の移動制限へ 病害虫のハエ蔓延防止(産経新聞)
害虫であるミカンコミバエは奄美大島では根絶されたはずであったが、今年に入ってから個体が多く発見されており、防疫の観点から、島外への作物移出が制限されるとのニュースである。大学生の時に触れた、「ミカンコミバエ」「根絶」という沖縄農業のキーワードが久々に思い返された。
ミカンコミバエは東南アジア原産の、果物を宿主とする虫で、卵を果皮に生み込み、幼虫は果実を餌にして成長する。当然、ミカンコミバエに利用された果物は商品価値が大幅に低下する。果物栽培をする農家にとっては天敵ともいえる害虫である。熱帯、亜熱帯地方で生息する虫であり、日本国内においては西南諸島、小笠原諸島で確認されていた。
ミカンコミバエやウリミバエ(ウリ科植物を宿主とする)が根絶計画が出されたのは沖縄が本土復帰した1972年のことである。方法はオスを誘因する化学物質と殺虫剤を用いて、オスを根絶やしにする「雄除去法」が1つ。合わせて、野良猫の繁殖を抑えるために去勢するのと同様の方法で、人工的に繁殖できなくしたメスを放して子孫を減らす「不妊虫放飼法」の2つの方法が採られた。西南諸島でミカンコミバエが根絶宣言されたのは1986年である。 ウリミバエについては「不妊虫放飼法」が採用され、1993年に西南諸島から根絶されている。この度、奄美大島で発見されたミカンコミバエは東南アジアから新たに飛来した個体が繁殖したものと見られるとのこと。
植物防疫法により、ミカンコミバエやウリミバエ等の害虫が発生した地域からの寄生植物の移動が禁止されている。ミカンコミバエ、ウリミバエの生息により、西南諸島、小笠原諸島からの野菜、果物の多くが移出できない状態が大正期以降長らく続いていた。沖縄農業がつい最近に至るまでサトウキビ作に傾倒していたのはこのことも一因となっている。ミカンコミバエは柑橘類全般、パパイヤ、マンゴー等が、ウリミバエはウリ科植物に寄生する為にゴーヤーは勿論のこと、パパイヤ、マンゴー、ドラゴンフルーツ等が移出できない作物であった(加工品は移出できた)。害虫を根絶したことで、西南諸島、小笠原諸島の農業の作物多様化が進んだのである(宮古・八重山群島はサトウキビ、肉用牛に傾倒したままではあるが)。
奄美大島でのミカンコミバエの再発生は驚きではあるが、これまで培った防除技術を以てすれば 、すぐにでも再根絶できると思われる。移出制限期間の農家への補償が気がかりではある。
《参考資料》
・沖縄県病害虫防除技術センター
・国立研究開発法人 国立環境研究所 侵入生物データベース
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