小売全面自由化では、域外への進出だけではなく、大手電力会社がガス小売に、都市ガス会社が電力小売に参入する動きが出ている。電力会社は火力発電用のLNGを流用すればガス供給が比較的容易であり、電力とガスのセット販売は商品として魅力的なものである。顧客の流出を防ぐだけには留まらず、売上増加に向けて電力会社、都市ガス会社ともに、営業活動が活況を呈している。
電気もガスも会社によって品質が変わるという事は基本的にはない。消費者の選択を受けるためには低廉な価格やメニュー設定は当然のこととして、企業イメージやブランド力が大きく関わると調査結果が出ている(博報堂エネルギーマーケティング推進室第5回生活者調査「電力小売自由化について」(PDF))。メニューについては未だ見えない部分が多い。今回は大手ガス会社の広報戦略、特にTVCMについて触れてみたい。
≪東京ガス≫ 現供給エリア:関東一円(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬)
http://tv.tokyo-gas.co.jp/
ガスの温かみを感じるようなストーリーCMと、エネファームの普及促進を狙ったCMが放映されている。また、広瀬すずと妻夫木聡が東京ガスのコーポレートスローガン「あなたとずっと、今日よりもっと」にまつわる語りだけを用いたCMもある。こちらはガスの利用促進ではなく、明らかに電力自由化を見据えた企業CMである。今を時めく広瀬すずの起用には資金力の強さを見せつけられるようである。流石は世界最大の都市ガス会社。あまり女性受けしそうになく、誰もが知っているわけではないが限られた年齢層に知名度が抜群である広瀬すずの起用はエネルギー会社として冒険に出たと言えよう。「「ピピッとコンロ 似ている母娘(WEB限定)」篇」では、娘役の広瀬すずが父親に手料理を楽しそうに作る姿が、母親と重なって見える構成となっている。あざとさが垣間見れるも父親心をくすぐられてしまう、なんとも憎らしい広瀬すずを見る事ができる。美味そうなグリル料理である。思わずネットでサクサクとスイッチングの手続きをしてしまいそうになるほど、訴求力の強いCMである。
ちなみに、2015年11月の時点でHPのトップに電力小売についてのバナーがあるのには驚いた。
≪東邦ガス≫ 現供給エリア:東海三県(愛知・三重・岐阜)
http://www.tohogas.co.jp/corporate/publicity/program/cm/
料理研究家の栗原はるみを起用し、ガスで作る料理のおいしさを表現している。 東京ガスと同様、エネファームのCMもある。東京ガスほどガツガツしたCMではなく、保守的な企業なのだとの印象を受けた。
私感ではあるが、やはり料理風景の見栄えではIHよりガスコンロの方がいい。火のぬくもりを感じられ、いま料理をしているのだという実感が得られる。火とは、熱源とは本来霊的な側面があるのである。
≪大阪ガス≫ 現供給エリア:近畿一円(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀)
http://home.osakagas.co.jp/cm_lib/index.html
CM女王の上戸彩、高学歴芸人のロザンが出演している。上戸彩の起用には広報活動への本気度が表れているように感じる。110年という歴史を強調したCMは安定供給を第一とするエネルギー企業らしい。東京ガスや東邦ガスに比べ、浴室暖房機やガス冷暖房機の商品説明のようなCMを制作しているのが興味深い。CMギャラリーを見る限りでは、上述の2社よりCMの種類が多い。
なお、ガス会社のCMは他社が制作したCMに社名だけを入れ替えたものや、日本ガス協会のコンセプトワード「ガ、スマート!」を使用した共通のCMがあるようである。
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