人間の生命活動がそうであるように、都市に水は欠かすことができない。都市・集落の形成は河川の存在抜きにありえない。人間活動と河川は切っても切れない縁なのである。今回は東北の諸都市を流れる河川について見ていきたい。一級河川水系が市中心部を流れる都市についてまとめたものを用意した。(赤太字は大都市雇用圏の中心都市、赤字は大都市雇用圏の構成都市)
一覧を作ってみると、改めて河川あっての都市だと感じさせられる。特に東北地方一の大河川である北上川は岩手内陸から石巻へと続く都市群を、阿武隈川は福島県中通りから仙南地域を支えている姿が浮かび上がった。
まず注目したいのは県庁所在地で唯一一級河川水系を持たない青森市についてである。青森は 江戸期の初めに置かれた港を軸として成立した町である。廃藩置県で現在の青森県が作られた際に、比較的発展していながらも県域の端にある弘前や八戸ではなく、県中央部に位置する地理の良さから青森に県庁が置かれることとなり、急速に発展したという歴史を持つ。城もなく商業の中心でもなかった青森は、明治期に人工的に造られた都市だと言えよう。大河川の流域でなくても、比較的広い平野(青森平野)に県庁という強い都市的成分を得た青森は、人口が流入して都市に成長したのである。なお、青森への県庁設置はその後現在に至るまで、青森、弘前、八戸の三権分立ならぬ三都市分立状態をもたらした。
東北地方では仙台・新潟に次いで製造品出荷額の多いいわき市も一級河川水系を有していない。磐城平藩の城が置かれていたものの3万石程度の小藩で
ある。豊富な資源量を誇った常磐炭田と戦後の工業化で大きく栄えた小名浜がいわき市の基礎を作り上げた新興都市と言えよう。
八幡平市は安代町、西根町、松尾村の3町村を起源とする平成の大合併の賜物である。安代町荒沢地区が馬淵川水系、安代町田代地区が米代川水系、西根町と松尾村が北上川水系であり、一級河川水系で3つに分割される自治体はこのほかにないのではないかと思われる。なお、馬淵川と米代川・北上川はそれぞれ流れ出る先が日本海と太平洋であり、市内に大分水嶺が存在するのである。北東北の緩やかな地形が自治体区割りでも反映されているようである。